読書感想 宇佐美りん『かか』
……うーちゃんはにくいのです。ととみたいな男も、そいを受け入れてしまう女も、あかぼうもにくいんです。そいして自分がにくいんでした。自分が女であり孕まされて産むことを決めつけられるこの得体の知れん性別であることが、いっとうがまんならなかった。男のことで一喜一憂したり泣き叫んだりするような女にはなりたくない。誰かのお嫁にも、かかにもなりたない。女に生まれついたこのくやしさが、かなしみが、おまいにはわからんのよ
離婚し心を病んでしまった母(かか)と娘(うーちゃん)を描いた話。
物語はうーちゃん視点で描かれて、なおかつ引用した文章みたいな独特な言葉遣いでずっと続く。この言葉の使い方がセンスあって面白い。
うーちゃんは病んでしまったかかに対する憎悪もあれば、愛情もあるし、女性に生まれた自分を嫌悪しているし、SNSで不幸自慢を見たら自分も虚言してでも同じように構ってもらおうともする。
文章が子供っぽく感じる言葉遣いや、かかを決定的に憎みきれないところや、ところどころに感じられる自意識過剰さはまさに10代っぽい子の感性だと思うよね。
短い本なので1つの1つの出来事はすぐに終わってしまうけども、そのどれもうーちゃんは今どきの子なんだなぁ、という感じに思ってくる本。
東方同人誌感想とか書いてみよう 1367冊目
じぜるさんの『幻想郷の銃使い』
ひょっとしたらいるかもしれない平行世界の自分と対峙するためのちゆりな話。。。
夢時空ネタで、夢時空のあらすじを知らないと何やってるかわかりにくい話なんですがpixivのちゆりの項目だけ見るとなんとなくわかると思います。赤ちゆりの方はEDに関わるネタバレもありますが夢時空を新規で今更できる人は数少ないので貼ってもいいよね。。。?
平行世界のちゆりの存在の匂わせも、魔法が使えない人間という設定もちゃんと原作の設定を活かしてる感じの作品で、ただの人間がそうでない人間に立ち向かうみたいな話はいいよね。レプリカがオリジナルに挑むために努力するっていう展開は好きだしその努力するちゆりがかっこいい。
この最後は夢時空のあらすじを知らないと、どちらかのちゆりが存在を消されて勝ったか負けたか読者の想像に任せる作品。って思っちゃうんですがちゃんと夢時空準拠だとするなら……。
東方同人誌感想とか書いてみよう 1365冊目
肩こり腰痛ドライアイさんの『アンコンディショナル・ラブ』
紫に式を外された藍、そこから生まれる感情とその前にあった感情の話。
藍はどこまで自意識があるのか?という感じの本で「式であるときに持っていた感情は藍のものなのか紫に仕込まれたものなのか」というゆからん本でもあったり。
この答えを追求する類の本ではなく、そうなった時のゆからんのシチュを楽しむ本なのであまり難しいことは考えずに悩んだりする藍やイチャイチャしてるようなゆからんを見て楽しめる本。
最後のコマのゆからんがどちらも完璧ではないただのだらだらしてる百合カップルみたいな感じで良いです。
Kindle Unlimitedで読める本、漫画の感想41冊目
『アマチュア考古学者の勝利 マイケル・ベントリスと線文字Bの解読』
これはレトロハッカーズという叢書のうちの1冊で、いろいろと興味深い技術関連の歴史小ネタを集めた叢書。短くてすぐ読める上にwiki以上のボリュームはあるので手軽に読むには最適です。
単品で買っても100円です。
さて、これは線文字Bという古代文字についての解読史をさらっと解説した本。専門の考古学者ではなく、アマチュア研究者が解読に成功した旨を語っています。
専門家は自分の研究の途中経過を報告するのを嫌がるけども、
アマチュアはそれを躊躇せずにどんどんと会報っぽい形式で専門家にも報告していって、結果的にそれが解読に近づいたという話はいろいろと考えさせられる。
そして解読に成功したからといって栄光が待っていたわけではないという……現実は残酷だ。
東方同人誌感想とか書いてみよう 1364冊目
じるランドさんの『ナユタハーフ』
さとまいが隠岐奈の下につくまでなお話。それはけっこう酷で……
過去に春を売る結合双生児っていうアイデアがどこから出てくるのだろう。ってまず思うしなかなかにその過去が暗くてつらい本。いろいろと想像できる本で、その想像はたのしいものではないけども、結局いろんな考えをしてしまうようなじるランド本。
ふつうに読めて、なおかつ偶数ページでも読めるような構成になってるのだけども偶数ページの方をよく読むと救いが本当にないルート、「一緒に行こ」の意味がこうも変えられるものなんだね。
結局いまのさとまいが幸せなのかどうかはわからないけども偶数ページの時よりは……?。と思ってしまうような話。さとまいのこの救いのためにもう1人(あるいは2人)が…と思うとなんともいえない気持ちにさせられるよね。