春画展レポートもどき その2 版画編。
2つめは版画編。
肉筆画から一変した雰囲気、の気がする。
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・菱川師宣 和合同塵、枕絵組物、若衆遊伽羅之枕、床の置物
若衆遊伽羅之枕は男色、女色まで入り混じった作品でその筋の人々には知られている作品みたい(このキーワードで検索してみたら分かるよ)。他のも当時の性的な本、の一端を知った気分になれて面白い。
・杉村治兵衛 枕絵組物
なんか卑猥、というよりも滑稽さが先に来る作品。
・西川祐信 夫婦双乃岡
絵だけだと特徴がなくて見落としがちだけども、描かれているの式之内親王、小野小町、伊勢、右近、和泉式部、赤染衛門、伊勢の大輔、紫式部、大弐の三位、周防の内侍、清少納言。と今の視点から見るとかなり不謹慎なのが混じっている春画。いや、当時でも紫式部や清少納言を題材にした春画ってネタ以外に需要があったのだろうか……。
・鳥居清信 欠題春画組物
段々と今の漫画っぽい線になってきてる気がする。気のせいかもしれないけど。
・奥村政信 染色のやま 闇の雛形、伊勢物語俳諧まめ男 夢想頭巾
前者は大英博物館のホームページで見られます。
伊勢物語 俳諧 まめ男 夢想頭巾 | 慶應義塾大学アート・センター(KUAC)
後者は登録すれば慶応大学のところから見られるっぽい。まめ男は小さくなるアイテムを手に入れた男がなんやかんやする春画本?なので現代的なアイデアで面白い。
・鳥居清満 水遊び
子供がいる前で平気で行為をする、って構図は春画独特なのか。この時代はこうだったのかよくわからないけどどうだったんでしょうね…。
・鈴木春信 綿摘女、煙管、縁側に三味線、地紙売り、夕涼み、風流江戸八景 両国の開仕、風流艶色真似ゑもん、風流座敷八景、欠題春画貼込帖
あまり胸に意識が持たれない、と言われる春画ですが綿摘女は胸を吸う男の構図で珍しい。真似ゑもんもまめ男と同じ着想からの話でこちらのが綺麗。真似ゑもんはここで見られます。
パブリックドメイン美術館 浮世絵 スライドショー 艶本 北斎ほか
・磯田湖龍斎 色道取組十二番
磯田湖龍斎「色道取組十二番」―大判錦絵秘画帖 (定本・浮世絵春画名品集成)
- 作者: リチャードレイン
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
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湯屋での風景をモチーフにした春画で、男女が混浴している最中に昂ぶった男を子供が
笑っている。この1枚で色々なものが描かれていてすごい。
・北尾重政 いたづらや行水を覗く夕鳥、閨花鳥襷
歌とセットになっているような作品
・勝川春章 会本拝開夜婦子取、好色図解十二候、色部類十二好
British Museum - Shiki burui juni-ko 色部類十二好 (Twelve Tastes in the Classification of Passion)
大英博物館のホームページで一部見られます。色部類十二好は7P(男1女6)を描いた大作。
・鳥居清長 色道十二番、袖の巻
この袖の巻は春画全体でも一番有名なんじゃないのかな…北斎の蛸と海女みたいな変態チックなのを除けば……
・喜多川歌麿 あぶな絵 親子三人、歌まくら、絵本笑上戸、ねがひの糸ぐち
Kitagawa Utamaro: shunga / abuna-e - British Museum - Ukiyo-e Search
子供の見ている前で女の股の下に手を突っ込む男、という構図
パブリックドメイン美術館 浮世絵 スライドショー 艶本 歌麿
歌まくらの方も描き込みが素敵
British Museum - Ehon warai jogo 絵本笑上戸 (Picture Book: The Laughing Drinker)
・鳥橋斎栄里 婦美の清書
鳥橋斎栄里「婦美の清書」―大判錦絵秘画帖 (定本・浮世絵春画名品集成)
- 作者: リチャードレイン,Richard Lane
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外国人男×日本人女性や、道具を使って自慰行為をする女性たちなど他の春画では見られない構図があるのが特徴。この外国人が出てくる画はもっと広まってもいい。とはいえ転写したら怒られそうなので貼らない……。
・葛飾北斎 喜能会之故真通、富久寿楚宇、浪千鳥、万福和合神
葛飾北斎 喜能会之故真通(キノエノコマツ) (浮世絵艶本集成)
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北斎「富久寿楚宇」―大判錦絵秘画帖 (定本 浮世絵春画名品集成)
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みんな大好き葛飾北斎、喜能会之故真通ってなんだそりゃって思った人も蛸と海女の入っているやつと言えば分かるよね…?ってくらい有名だと思う。蛸と海女以外にも女性同士の描写、男性器に何かを書く女性(この意味誰か教えて)など独特な構図がちらほら。そして何よりも異常なまでびっしり埋められた文字や画面いっぱいに広がる男女。このインパクトは今でも感じられるのだから当時はよっぽどだったと思う。あと万福和合神はストーリー性のなかった春画にストーリー性を入れた画期的な作品、と解説があるのでどこまでも北斎は先駆者だったんだなぁって。
北斎は知名度があるのにネットで全編公開されてそうにないのはやっぱり無料で公開するよりも出版すると売れるから、なのかな……。英語とかで探せば出てきそうな気もするけど。
・歌川国貞 四季の詠、艶紫娯拾餘帖、花鳥餘情吾妻源氏、正写相生源氏、春色初音之六女、
ここでほんのちょっとだけ見られます。
いま見ても北斎、国貞、国芳あたりって明らかに他の作者と画力が違うよね…。
・歌川国芳 逢見百景、華古与見、江戸錦 吾妻文庫
逢見百景は近江八景のもじりで、それぞれの景色と行為が描かれる。最後には女性器、というか女性の股の上を泳ぐ船の構図で終わるので面白いパロディ本になってる。
華古与見は執拗なまでの描き込み量から成り立つ春画で、もうここまで来ると描き込みの方にしか目が行かない
・菊川英山 あぶな絵
慣れてない娘を引き寄せる男の図
・渓斎英泉 あぶな絵 源氏物語、炬燵、若衆と髪結う女 梅が枝、屏風の前、春野薄雪
女に悪戯しようとする男の図が多い、特に春野薄雪の一枚は本気で抵抗しているような女が描かれているようで珍しい。
・狩野永岳、円山応震ほか 華月帖
British Museum - Kagetsujō 華月帖 (Kagetsu’s Album)
影絵で春画を描くという面白い趣向の本、現代でいう合同誌の類かもしれない。
・月岡雪鼎 婚礼秘㕝袋、女大楽宝開、女貞訓下所文庫、艶道日夜女宝記
婚礼秘㕝袋は婚礼から新婚生活に到るまでの性を描いた作品、女大楽宝開は女子向けの教育本である女大学宝箱のパロディ艶本、女貞訓下所文庫もパロディ本
さすがに近代デジタルライブラリーには女大学宝開はないので解説しているサイトの方を
女貞訓下所文庫は慶応大学のところで登録すれば読めるっぽい
女貞訓下所文庫 | 慶應義塾大学アート・センター(KUAC)
艶道日夜女宝記はこの本のパロディみたい
・竹原春朝斎 枕童子抜差万遍玉茎
色々と描かれていて面白そう、なものの図録じゃ小さすぎて…でも調べてもあんまり出てこないんだよねこれ。
・北尾重政 お染久松
実際に心中事件を題材にとった春画。こういうのを春画化するのは不謹慎にも思えるけども当時の感覚はどうだったのだろう……。
・開 おはん長右衛門おちょ半兵衛 曽女分美婦人
劇のパロディ艶本らしい。江戸時代からエロ同人誌的な事をする文化はやっぱりあったんですね…
・吉田半兵衛 好色訓蒙図彙
真面目そうなタイトルに反してやっぱる春本、挿絵で色々と描いた本っぽい
・渓斎英泉 閨中紀聞 枕文庫
....1.jpn.閨中紀聞 枕文庫 / 淫乱斎主人著 ; 白水渙人画図 - Site Gallica mobile
検索したらフランスのサイト?で全編公開されてた。女性器をおおっぴらに1ページまるまる描いた構図なんかは今は不可能だし、他の構図も現代的?というか今読んでも全く色褪せないよ。
・暁鐘成 万校区新話
世界地図風に見せかけて、北極を女性器、南極を男性器に見せた絵。あと解説では触れられてないけどもこのタイトルも卑猥じゃない?
・北尾政美 大物船饅頭吉野腹矢倉 義経戦犯枕
義経千本桜パロディ化したもの、検索しても1本も出てこなかった…。
・伝恋川春町 好色 魂臚遺精夢
これもパロディ本の類みたい、夢乃井中でやりたい放題をする若者、というのは今にも通じるネタ
・歌川国貞 絵本 開談夜之殿
これには”男女心中をしたものの男だけが生き残り、その男の男根を食いちぎる亡霊女”というすさまじい構図がある…局部が丸出しでリボンっぽいものをしているところに可笑しさがあるはずなのに、女の表情と口にしているもののせいで可笑しさが全く感じられない…。これはもっと広まってもいいんじゃないかな…。
・歌川豊国 絵本 開中鏡
こちらも骸骨と交わる男や、心中して血まみれになる男女などインパクトある絵がある。昔から際どいのを描く人描いてたんだし、今の人の想像力も大して進化してないよねきっと…
・磯田湖龍斎 笑翔 色物馬鹿本草
笑翔 色物馬鹿本草 | 慶應義塾大学アート・センター(KUAC)
登録すれば読めるっぽい作品、当時の性風俗事情を描いた本みたい。
・歌川国虎 祝言色女男思
この時代からもう単に男女がまぐわうだけでは売れない、という解説がある。こうして過激を求めていくのかな……
・渓斎英泉 古能手佳史話
これは立命館大図書館で読めるみたい。滑稽なものから愛憎を感じられるものまで多彩。
・勝川春英 御覧男女姿
男とアカエイが交わる図は知っている人なら知っているはず。蛸と海女ほど有名ではないけどね。ちなみにアカエイ×人間という図はこれがオリジナルではなく他にもいくつか伝承があります。人間の想像力って……
http://www.page.sannet.ne.jp/hr_nishi/dairy/akaei/akaei.html
・西川祐信 好色役者枕がへし
市川團十郎などがネタにされた艶本、パロディ本の類っぽい
・奥村政信 艶好虎之巻
牛若丸を題材にした艶本
・歌川国定 宝合
人気役者の絵を描き、それに付け加えて”この役者が持ってそうな男根”を描くという悪趣味本。これも今じゃ描けないネタ。男性器版の陽、女性器版の陰があるみたい。男性器版は女子が買ったのかな……。
・歌川国安 大和妖狐伝
三代目坂東三津五郎のスキャンダルをネタにした艶本、といっても解説読むと元が複雑すぎて…
長過ぎるのでここまで読んだ人はいない気がするけども3に続きます。