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読書感想 李琴峰(りことみ) 『星月夜』は異郷に生きる女性を描いた百合小説ですよ

この作者さんの本を初めて読んだ感想です。

ネタバレありなので注意。作品を読んでから感想を読むのを推奨。いちおうあらすじだけ最初に置いときます。

あらゆる縛りから逃れたいと願う二人の女性は、異国の地・日本で出会った――。

両親の反対を押し切り、日本の大学で日本語を教える台湾人の柳凝月(りゅうぎょうげつ)は、新疆ウイグル自治区出身で、日本の大学院を目指す生徒の玉麗吐孜(ユーリートゥーズー)に初めて会った時から魅了されていた。玉麗吐孜もまた、柳凝月に惹かれていた。ある日、玉麗吐孜の元恋人の同居人が部屋を出て行くと言い出し、家賃問題に悩んでいた彼女は付き合い始めの柳との同居を考えたが、今の距離感が心地よく、これ以上親密になるのを恐れていた。一方、柳は玉麗吐孜の受験が上手くいったら一緒に暮らし、いつか結婚しようという想いが募っていた。期待もあえなく、玉麗吐孜は不合格通知を受け、日本に残る理由を失っていた。生国の政治情勢、家族のこと、隠している自分のセクシュアリティー……。共通の言語を持ち、語り合い、玉麗吐孜のことを分かっていると思っていた柳だが、玉麗吐孜が背負う重りを知らずにいた自分に気付く……。

 

 

星月夜 (集英社文芸単行本)

星月夜 (集英社文芸単行本)

 

 台湾人の日本語教師柳凝月(りゅうぎょうげつ)と 日本の大学院を目指す生徒のウイグル人の玉麗吐孜(ユーリートゥーズー)という2人の女性の話。

 

なんだろう日本を舞台にした話で日本語を話してコミュニケーションしているのが多いのに、異郷に生きる人を描いた話に感じる。登場している女性たちの日本での生きづらさ、というよりもいろいろなものに縛れられて自由に身動きできない感じがそのまま伝わってくるような感じ。

在留カードのエピソードとか日本に住んでいる日本人と外国人では読む感覚が違ってくるのかもしれない。

 

 そして、幾多の苦難を乗り越えて2人が結ばれてハッピーエンド!とはならない。それならどれほど良かっただろうにと2人も思っているけども、玉麗吐孜(ユーリートゥーズー)のたぶんウイグルに戻る事を選ぶ、家族の元に戻る事を選んでしまうと匂わせる終わり方はその選択の重みをどうしても感じてしまう。

好き同士で2人になることよりもたぶん大事であろうものを見せられる上に、その解決方法もわからない。そして今の日本でも充分ありそうな選択なのがなかなかにシビア。

 

あと、この2人に感じた日本人のバイト女性が感じた嫉妬というのは言語の壁、というかどうしても異国の人同士でやっていくなら向き合わないといけない壁なのかなぁと思ってしまう。こちらは本筋ではないけどもこの嫉妬と同じような経験がないのに、日本語を母語とするせいかなんとなくわかってしまう。

 

全体的に誰も救われないし、楽しいおすすめ!とはならないんですが、それでも彼女たちの生きる様を見続けたくなるし、誰かに読んでほしくなるような百合小説。

日本が舞台だとしても、その日本を異郷として生きる人たちがいるというあまり普段着にしない事を考えされてくれる。

こういうのってレズビアン文学とかそういう堅苦しい言葉でなく百合小説みたいに言った方が手にとって貰えそうな気もしますがどうなんでしょうね。それ以外の要素も充分に含まれてるので百合小説ってなんか語弊もありそうですが。。他の作品も気になる。