『オウムを生きて』
私は決して口にしませんが若い世代が友たち同士でふざけているとき、「あんなやつ、殺しちゃえ」などと気軽に言うこともあります。一般的な人間関係であれば単なる冗談ですが、そこに権力が絡むと何の気なしの発言を真に受けて、本当に実行してしまう人もいます。私はそのこわさを、身をもってよく知っているのです。
末端の元信者とその家族、そして麻原四女へのインタビューをまとめた本。上の引用台詞は四女の言葉。
以下は逆に信者達の言葉。2人だけ引用
1人目
2人目
名前も報道されないような元信者達がどのようにこの宗教を選択したのかが生い立ちを含めて筋道たてて語られていて、それを読むと「こんな宗教にハマるのはアイデンティティがない弱い人間だけ」とは簡単に言えないような気がする。
どんな全うな人間だって、人生のどこかの瞬間にはとてもまっとうな思考回路とはいえない状態になってたはず。そのまともでない思考回路の時に少しでも非現実に、宗教に救いを求める事自体は弱さの証でも、悪い事でもない事でもないはず。その選択肢がたまたまオウムだっただけかもしれない。他の選択肢がなかったような精神状態だったのかもしれない。
自分がまともじゃなかった精神状態の時に、あるいはこれからまともじゃない精神状態、ちょっとだけ追い詰められる精神状態になったとしてよくしらない宗教に入信しないと胸を張って言える人間がどれくらいいるのだろう?自分には言えない。
それともやっぱりそれでも、この人達も事件にわずかながらでも関わった事は確かなんだから批判の対象にされて、それは一生十字架をして背負うべきなのだろうか?最初は何かしら救いを求めただけなのに、結果としてああなってしまった団体に関わったのだから責任はやっぱり存在する?無知だったとしても?
どちらの結論も出せそうになって揺らいでしまうような本。
自分には結論は出せていない。