駿河城御前試合原作漫画読み比べ
南條範夫の『駿河城御前試合』を漫画化した作品としては『シグルイ』が一番有名ですが、それ以外にも3名の漫画家によって『駿河城御前試合』は漫画化されています。どれも各作家の個性が出てるし、全部Kindleで手軽に入手が可能なので(原作小説はKindleにないのでこれも早く電子化しないかな…)、『シグルイ』以外の『駿河城御前試合』漫画を読む際の参考になれば。
*2019/7/26更新
駿河城御前試合の原作もKindle版が公開されてますね。入手しやすくなったのでぜひ
※各原作漫画、及び原作である南條範夫の『駿河城御前試合』のネタバレを多分に含む記事です。ご注意を。
書かれている試合、及び結果(ネタバレなので反転)
・無明逆流れ
(清玄への仕置が描かれるところ)
●伊良子清玄 対○牛股権左衛門
●伊良子清玄 対○藤木源之助
●伊良子清玄 対○岩本虎眼
(清玄の復讐と師匠の仇討を行う弟子たち)
○伊良子清玄 対●岩本虎眼
○伊良子清玄 対●藤木源之助
○伊良子清玄 対●牛股権左衛門
(御前試合)
○藤木源之助 対●伊良子清玄
・被虐の一太刀
○座波間左衛門 対 ●市川弥之助
○座波間左衛門 対 ●市川伝一郎
○座波間左衛門 対 ●磯田久之進
(御前試合)
●座波間左衛門 対 ○磯田きぬ
峰打ち不殺
○月岡雪之介 対 ●黒川軍之進
○月岡雪之介 対 ●雲井&桑田
○月岡雪之介 対 ●矢部六大夫
(黒川小次郎の師匠の回想)
(御前試合)
○月岡雪之介 対 ●黒川小次郎
がま剣法
○屈木頑之助 対 ●斎田宗之助
○屈木頑之助 対 ●倉川喜左衛門
○屈木頑之助 対 ●佐助
○屈木頑之助 対 ●笹原権八郎
○笹原修三郎 対 ●大蛇
(御前試合)
○笹原修三郎 対 ●屈木頑之助
相打つ「獅子反敵」
○深田剛之進 対 ●飯村九左衛門
○鶴岡順之介 対 ●飯村九左衛門
(御前試合)
●鶴岡順之介 対 ●深田剛之進
風車十字打ち
○津上国ノ介 対 ●天童九左衛門
○児島宗蔵 対●大猿
(御前試合)
●津上国ノ介 対 ●児島宗蔵
飛竜剣敗れたり
○石黒武太夫 対●以蔵
○黒江剛太郎&安之助 対●石黒武太夫
○黒江剛太郎対●安之助
(御前試合)
●黒江剛太郎 対○片岡京之助
疾風弾幕突き
○進藤武左衛門 対●佐伯修二郎
○小村源之助 対●神野右馬丞
(御前試合)
○小村源之助 対●進藤武左衛門
身代わり試合
(御前試合)
(御前試合後)
○芝山半兵衛 対●栗田彦太郎
●栗田次郎太夫 対○芝山半兵衛
破幻の秘太刀
○笹島志摩介 対●笠間甚左衛門
○笹島志摩介 対●村木まつ
(御前試合)
●笹島志摩介 対●成瀬大四郎
無惨ト伝流
○水谷八弥 対●古宇田半左衛門
○水谷八弥 対●甲頭刑部
○ト部新太郎 対●多田右馬之介
○ト部新太郎 対●甲頭刑部
○ト部新太郎 対●多田右馬之介
○水谷八弥 対●ト部新太郎
(御前試合)
●水谷八弥 対●ト部晴家
剣士凡て斃る
○車大膳 対●月岡雪乃介
○車大膳 対●小村源之助
○小村源之助 対●磯田きぬ
○藤木源之助 対●磯田きぬ
●小村源之助 対●片岡京之助
●藤木源之助 対●佐伯修二郎
●磯田きぬ
全編通して血なまぐささがあるし、どの剣士達も絵にすると映えそうなキャラ、かっこよさそうな技ばかりなんだよね。これはみんな漫画にしたくなるのも分かる。
そして、何よりもこの原作は最終章あってこその作品。作品の悲惨さが全て最終章に詰まっているという感じ。誰も救われない話。
どの漫画も「最終章を漫画化出来てない(シグルイが再開してもやらないのでは)」あたりからも、漫画にする限界もまた感じてしまう。原作読んでない人なら読んだ方がいいよ。やっぱり。
この作品に描かれている試合(ネタバレなので反転)
○伊良子清玄 対 ●藤木源之助
●伊良子清玄 対 ○牛股権左衛門
○藤木源之助/伊良子清玄 対●船木兵馬/船木一馬
●伊良子清玄 対○牛股権左衛門
●伊良子清玄 対○藤木源之助
●伊良子清玄 対○岩本虎眼
△岩本虎眼 対△柳生宗矩
○近藤涼之介 対●浪人達
○藤木源之助 対●浪人達
●近藤涼之介 対○伊良子清玄
○宗像進八郎 対●檜垣陣五郎
●宗像進八郎 対○伊良子清玄
●山崎九郎右衛門 対○伊良子清玄
●丸子彦兵衛 対○伊良子清玄
○藤木源之助 対●興津三十郎
○藤木源之助 対●三重
○岩本虎眼 対●夕雲
○蝉丸 対●夕雲
○牛股権左衛門 対●蝉丸その他
○藤木源之助 対●友六
○伊良子清玄 対●岩本虎眼
○伊良子清玄 対●卯月修三郎
○藤木源之助 対●蛇平四郎
○藤木源之助 対●蛇平四郎その他
○伊良子清玄 対●片桐善鬼
○伊良子清玄 対●藤木源之助
○牛股権左衛門 対●清玄の助太刀11名
○伊良子清玄 対●牛股権左衛門
○伊良子清玄 対●牛股権左衛門ゾンビ
○屈木頑之助 対 ●斎田宗之助
○屈木頑之助 対 ●倉川喜左衛門
○笹原修三郎 対 ●大蛇
○屈木頑之助 対 ●佐助
○屈木頑之助 対 ●笹原権八郎
○藤木源之助 対●孕石雪千代
○伊良子清玄 対●清玄
○藤木源之助 対●峻安
△藤木源之助 対△月岡雪乃介
○三重 対●いく
○藤木源之助 対●猪俣晋吾
○狒狒 対●桃井圭介
○伊良子清玄 対●狒狒
○笹原修三郎 対●藤木源之助
○藤木源之助 対●笹原修三郎
○藤木源之助 対●平次郎
(御前試合)
○藤木源之助 対●伊良子清玄
みんな大好きシグルイ。かなりの原作改変が行われているのにものすごく面白い。原作だと虎眼先生は曖昧になったりしないし、牛股権左衛門もこんなおかしいキャラじゃないし、源之助もここまで頑固なキャラじゃない。相違点を挙げるときりがない。それでも面白いのは、この漫画特有の緊張感があるからなんだよね。この緊張感は一周まわってギャグにしか見えないところと、すごくかっこいいところが混在しているので、これがまた読んでて楽しい。いやまぁ、最後の方の巻で少しダレたのは否定しませんが。
一応、一部完となっている作品で、がま剣法の章を投げて終わらせたし、きぬその他のキャラを一切登場させなかったのでまだまだ続ける要素はあるよ。いつ再開するんだろう?
あと最後の三重の行動の理由は原作を踏襲しているので、なんでこうなるの?と思ったら原作読んだ方が分かりやすいかもしれない。源之助対清玄を描いた漫画の中で、三重のこの行動を変えている漫画はないよ。そして源之助が一番悲惨なのはどの漫画でもなく原作小説という……。
Kindleで100円とお買い得なのでこの機会に(ステマ)。ただこの表紙のセンスはどうにかならなかったのかな……単行本版だと表紙はかっこよかったのに。
この作品に描かれている試合(ネタバレなので反転)
○座波間左衛門 対 ●市川弥之助
○座波間左衛門 対 ●市川伝一郎
○座波間左衛門 対 ●磯田久之進
(御前試合)
●座波間左衛門 対 ○磯田きぬ
○月岡雪乃介 対●沢田彦九郎
○月岡雪乃介 対●武士5人
○月岡雪乃介 対●追手2人
○月岡雪之介 対●黒川軍之進
○月岡雪乃介 対●矢部六太夫
(御前試合)
○月岡雪乃介 対●黒川小次郎
○屈木頑之助 対 ●斎田宗之助
○屈木頑之助 対 ●倉川喜左衛門
○屈木頑之助 対 ●笹原権八郎
(御前試合)
○笹原修三郎 対 ●屈木頑之助
(御前試合)
●津上国ノ介 対 ●児島宗蔵
○進藤武左衛門 対●佐伯修二郎
(御前試合)
○小村源之助 対●進藤武左衛門
(御前試合)
(御前試合後)
○芝山半兵衛 対●栗田彦太郎
●栗田次郎太夫 対○芝山半兵衛
○古宇田半左衛門 対●飯塚修理亮盛長
○水谷八弥 対●古宇田半左衛門
●水谷八弥 対●ト部晴家
4つある駿河城御前試合原作漫画の中で一番原作に近い構成になっている作品。原作のセリフをそのまま引用したりしてるので、原作の補完としてならすごい楽しめる。ただ原作読んでないととっつきにくいかなぁ……。
平田弘史の漫画は昔の漫画っぽいコマ割りなので、今読むとそこがまた読みにくいのだけど、それで敬遠すると丁寧な書き込みとかを見逃す事になるので勿体無いよ。平田弘史の漫画の良さは丁寧に描かれた絵にある(と思うし)。
「無明逆流れ」を漫画にしてないのはとみ新蔵が描いてたからだと思うよ。
この作品に描かれている試合(ネタバレなので反転)
○伊良子清玄 対●浪人たち
●伊良子清玄 対○牛股権左衛門
●伊良子清玄 対○藤木源之助
●伊良子清玄 対○岩本虎眼
○伊良子清玄 対●板部紋十郎
○伊良子清玄 対●岩本虎眼
○伊良子清玄 対●藤木源之助
○伊良子清玄 対●牛股権左衛門
○伊良子清玄 対●野盗たち
○伊良子清玄 対●馬
○伊良子清玄 対●剣士たち
(御前試合)
○藤木源之助 対●伊良子清玄
「無明逆流れ」編だけを漫画化した作品。オリジナルエピソードも含みつつも基本的に原作を踏襲してます。ただ、原作で描かれている「御前試合後の源之助」とは違った源之助になってる。どちらの源之助が救われないかというと…ねぇ。絵の迫力がどうしても他の3名と比べてしまうと薄いのはまぁしょうがないよね……。
どの漫画でも救われない源之助って。。
そういえば清玄が復讐のために岩本道場門下生を襲った、という設定は『シグルイ』オリジナル設定だよ。他は全部原作の「復讐のために腕を磨いているうちに、いつの間にか流れ星を打ち破りたいという欲が勝っていた」という原作の設定を踏襲してるよ。
この作品に描かれている試合(ネタバレなので反転)
●伊良子清玄 対○岩本虎眼
○伊良子清玄 対●岩本虎眼
○伊良子清玄 対●藤木源之助
(御前試合)
○藤木源之助 対●伊良子清玄
○屈木頑之助 対 ●斎田宗之助
○屈木頑之助 対 ●倉川喜左衛門
○屈木頑之助 対 ●笹原権八郎
(御前試合)
○笹原修三郎 対 ●屈木頑之助
○進藤武左衛門 対●佐伯修二郎
(御前試合)
○小村源之助 対●進藤武左衛門
○石黒武太夫 対●以蔵
○黒江剛太郎&安之助 対●石黒武太夫
○黒江剛太郎対●安之助
●黒江剛太郎 対○片岡京之助
(御前試合)
○宮本武蔵 対●黒江剛太郎
(御前試合)
●津上国ノ介 対 ●児島宗蔵
(御前試合)
●座波間左衛門 対 ○磯田きぬ
(御前試合)
○禅智内供 対 ●戸田伝衛門
(御前試合)
○中村進吾 対 ●多情丸
○成瀬大四郎 対●馬
○成瀬大四郎 対●大江重兵衛
○成瀬大四郎 対●笹島志摩介
(御前試合)
○成瀬大四郎 対●笹島志摩介
○仏法僧 対●三枝伊豆守
(御前試合)
○仏法僧 対●あけび
○鬼無 朋之介/月之介 対●飯尾十兵衛
(御前試合)
●鬼無 朋之介 対●鬼無月之介
森秀樹のこの漫画の絵って山口貴由の絵とはまた違った迫力、狂気があるし『シグルイ』だけ読むのは勿体無いと思える漫画。最初は「上手いなぁ」とだけ思う絵が、被虐の一太刀あたりから「狂ってる。。」みたいな構図に変化していくし、この変遷はすごい。最初から色々と狂っている『シグルイ』とはまた違う面白さ。
あと、この漫画の特徴はやっぱり「御前試合のエピソードまでオリジナルストーリー」を導入している事だと思う。完全オリジナル設定な試合がいくつも入っているのに「原作でもやってそう……」と思わせるような迫力がこの漫画にはあるよ。
原作を読んでなくとも「さすがにこれは原作じゃやってないでしょう……」と思った上で楽しませてくれる『シグルイ』とは楽しみ方が違ってくる漫画で、こちらはこちらで完成度が高い作品なので読み比べにどうぞ。。
1試合1試合をかなり短くまとめてるのも良いと思う。
さて、とりあえず簡単に全部紹介してみました。
個人的に好きな順番は
原作>『シグルイ』=『腕』>『駿河城御前試合(平田弘史版)』>『駿河城御前試合(とみ新蔵版)』だったりです。そういえば『無明逆流れ』の部分だけを映画化したやつもあるのでこれもそのうち観たい。。