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自民党憲法草案を現行憲法と比較してみた その1?(平和生存権、政教分離項目、最高法規規定を変更……)

選挙前なのでそれに関連した話題を適当に。

一部で反発がありますが、あまり広まってるようには見えないこの自民党憲法草案。

既に他に色々な比較検証サイトがあるので、今更個人がやる意味あるの?とも思われそうですが、こういうのは自分でやってこそだよね。

参議院選挙行く前に絶対この憲法草案は見といた方がいいよ。これを知っとくか知らないかできっと意見が変わるから。

 

比較検証はここが一番わかりやすいです。たぶん。

自民党憲法草案の条文解説 - 全文対照表、改正の概要、法的分析

自民党憲法草案の条文解説(前文~40条)

自民党が作ったQ&Aも

【自民党憲法改正草案】見やすい対照表で現憲法との違いが分かる!

改正草案Q&A | 自由民主党 憲法改正推進本部

全文の紹介

日本国憲法全文|佐賀新聞LiVE

自民党憲法改正草案全文|佐賀新聞LiVE

 

さて、この憲法草案を見たら相当にひどいものだと個人的には思うんですが。

とりあえず全てを引用比較するのはやりきれないのでまずは問題だと思う部分の引用から。上記サイトを参考にしてます。

 

・前文

日本国憲法 自民党草案
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
 日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
 我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
 日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
 我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
 日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

前文の大幅な変更は色々な解釈が既にありますが、ん??ととりあえず思ったところが2点。

 

・削除された「平和のうちに生存する権利」という言葉

ここを指摘して戦争法だ!と叩く人たちももういますが、これはそう言われてもしょうがないよ。9条変更との整合性をとるにしたってわざわざ削除する意味がない。

 

・追加された「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。」という言葉

これに準じる言葉は現行憲法には存在しません。別にいいこと言ってるよね。と思われそうですが、「どんな状況だろうと和を尊重し、国家のために働け」との解釈も可能になるよね? 

こう考えると現行憲法の「自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」という文章とは明らかに違っている、他国を無視してでも国家のために働くべきとも読めるよねぇ……。この部分を他の人がどう読んだかは是非聞いてみたい。

 

この部分の自民党回答はこれ。第24条の改正部分にもかかってきます。

【自民党憲法改正草案】見やすい対照表で現憲法との違いが分かる! 憲法改正草案 第24条 (家族、婚姻等に関する基本原則)

【Q16】
家族に関する規定は、どのように変えたのですか?

【自民党の答】
 家族は、社会の極めて重要な存在ですが、昨今、家族の絆が薄くなってきていると言われています。こうしたことに鑑みて、24条1項に家族の規定を新設し、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」と規定しました。なお、前段については、世界人権宣言16条3項も参考にしました。

 党内議論では、「親子の扶養義務についても明文の規定を置くべきである。」との意見もありましたが、それは基本的に法律事項であることや、「家族は、互いに助け合わなければならない」という規定を置いたことから、採用しませんでした。

(参考)世界人権宣言16条3項
 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。

・第12、13条 

日本国憲法 自民党草案
第12条
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第12条(国民の責務)
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない
第13条
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第13条(人としての尊重等)
 全て国民は、として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

ここも良く批判される部分、個人を「人」に公共の福祉を「公益及び公の秩序」に変更している。公益って一体なに?国が勝手に決めてしまえる事じゃないの?とも思わせるような文面。

これについては自民党が公式回答をしているのでこれも参と言ってるけどね参考に。ここでは”「反国家的な行動を取り締まる」ことを意図したものではありません”と 言ってるけどね。”ちなみになぜ個人を「人」に変えたのかは回答なし。どこか突っ込めばいいのに

【自民党憲法改正草案】見やすい対照表で現憲法との違いが分かる! Q14

【Q14】
「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えたのは、なぜですか?

【自民党の答】
 従来の「公共の福祉」という表現は、その意味が曖昧で、分かりにくいものです。そのため学説上は「公共の福祉は、人権相互の衝突の場合に限って、その権利行使を制約するものであって、個々の人権を超えた公益による直接的な権利制約を正当化するものではない」などという解釈が主張されています。

 今回の改正では、このように意味が曖昧である「公共の福祉」という文言を「公益及び公の秩序」と改正することにより、憲法によって保障される基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにしたものです

 なお、「公の秩序」と規定したのは、「反国家的な行動を取り締まる」ことを意図したものではありません。「公の秩序」とは「社会秩序」のことであり、平穏な社会生活のことを意味します。個人が人権を主張する場合に、他人に迷惑を掛けてはいけないのは、当然のことです。そのことをより明示的に規定しただけであり、これにより人権が大きく制約されるものではありません

 

 

・第18、19、36条 

日本国憲法 自民党草案
第18条
 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第18条(身体の拘束及び苦役からの自由)
1 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない
2 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第19条
 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない
第19条(思想及び良心の自由)
 思想及び良心の自由は、保障する
第36条
 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止)
 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、禁止する。

「いかなる」という言葉を「社会的又は経済的関係において」に置き換えてます。つまり「社会的、経済的関係以外」 なら拘束は憲法によって禁止されなくなるという事。これは「政治的関係」「軍事的関係」の拘束の伏線なのでは? という説もあるしわざわざ変える意味がまたわからない。

また奴隷的拘束も受けないという文章を「身体を拘束されない」という文章に変更しています。適用範囲で言うなら普通に考えて奴隷的拘束>>身体拘束なので、「身体拘束でない奴隷的拘束は憲法違反ではない」事になります。具体的に言うとどんな行為なんだろうなぁ……。

19条も18条にかかってきそうな部分で「侵してはならない」という強い文言が「保証する」という弱い文面になっています。つまり「思想及び良心の自由を国が保証する」というだけで「それを国侵す事は憲法違反ではなくなる」という事……?

また36条の「絶対に」という文章がわざわざご丁寧に削除されています。

そして一番ひどいのはこの部分に対する「自民党の回答が存在しない」事(少なくともQ&Aには存在しない)。9条その他をアピールしただけでここをそのまま押し通すつもりなの?

 

 

・第20条 

日本国憲法 自民党草案
第20条
1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第20条(信教の自由)
1 信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。

ここは議論が分かれるところで、自分は宗教団体が「政治上の権力を行使してはならない。」との文面を削除したところがどうにも解せない。明らかに何かの宗教関係を政治に押し込もうとしているよねぇ…。20条の3は靖国参拝その他が全て合憲で通せるようになるのでここはまぁ妥当じゃないのかなぁ…(ここに反発している人もいますが)

この点は神道政治連盟や日本会議あたりで調べてみると面白いよ、ガーディアンのこの記事なんかも面白かった)

 

これに対する自民党回答

【自民党憲法改正草案】見やすい対照表で現憲法との違いが分かる! 憲法改正草案 第20条 (信教の自由)

【Q19】
その他、国民の権利義務に関して、どのような規定を置いたのですか?

【自民党の答】
(1)国等による宗教的活動の禁止規定の明確化(20条3項)

 国や地方自治体等による宗教教育の禁止については、特定の宗教の教育が禁止されるものであり、一般教養としての宗教教育を含むものではないという解釈が通説です。そのことを条文上明確にするため、「特定の宗教のための教育」という文言に改めました。
 さらに、最高裁判例を参考にして後段を加え、「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないもの」については、国や地方自治体による宗教的活動の禁止の対象から外しました。これにより、地鎮祭に当たって公費から玉串料を支出するなどの問題が現実に解決されます

 

第97-99条 

日本国憲法 自民党草案
第十章 最高法規
第97条
 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第十一章 最高法規
第98条
1 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第101条(憲法の最高法規性等)
1 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第99条
 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
第102条(憲法尊重擁護義務)
1 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。

個人的に一番納得出来ない部分、97条に該当する部分をまるごと削除している。ここは一番論争になる部分で削除擁護派は「11条と重複してる部分だから削除しても問題はない」(これは自民党も言ってたはず)、反対派は「最高法規の部分にあったからからこそ重要であり、それを削除するなんてとんでもない」という意見がだいたい見られますね。

というわけで11条を読まない事には議論が出来ないので貼ります。

・11条

日本国憲法 自民党草案
 第11条
 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
 第11条(基本的人権の享有)
 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。

 

まぁ確かにこれだけ読むなら11条と97条は似たような事が書いてあるし、11条の変更部分を見たところでも余計な部分だけ削ってすっきりさせたように見える。でも11条は「国民の権利及び義務」にかかってくる部分で、97条は「最高法規」にかかってくる部分。どちらが重い文章か考えたら97条の方だと思ったりする。11条には「過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」といった強い言葉は存在しないからね

削るんだったら11条の方を削ればよかったじゃない?との暴論も出てきそうになる。

やっぱりわざわざ削る必要はないと思うよ。削ったところで批判が出てくるのはわかりきったような部分なんだし……。

 

あと99条は現行憲法では「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」だけが尊重し擁護する義務を負う、なっていたのに自民党案では「国民」が追加されてる。現行の憲法は国家が遵守するための法だったのに、国民が遵守するための法に変わってしまっている。家族に関する項目が追加された事もこれは明らか。この方向性変更については「日本国民が憲法を遵守するのは当然でしょう」という意見もありそうですが、遵守するに値する憲法を尊重されているものは「現行の日本国憲法」であり「自民党草案」ではないと思うんですけどねぇ…。

いろいろと穴が見えてくる(気がする)この憲法草案を見せられて「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」

ってそりゃあないとやっぱりと思う。

「天皇」が削除されてる事についての議論はめんどくさいのでスルーします)

 

 

さて、ここまでとりあえず気になった部分を適当に書き連ねてみました。もっときちんと解説してるところがいくらでもあるし(上に貼ったサイトなんか特にね)、ただの個人的意見として流してくれれば。何か発言するって大事だよね。馬鹿にされるならそれでいいし。

あと肝心の9条についても何にもこの記事で書かなかったのでそのうちやる気が出たらまた書く…かもしれません。

というわけでその1?でした。