東方同人誌感想とか書いてみよう 1003冊目
ゐた・せくすありすさんの『レギオンの肖像』
「ねえ、パチェ」
悪魔が、毒を含んだ甘い声で囁く。
「そろそろ咲夜が死ぬわ」
低く枯れた声で、そうとだけ。
「またなのね」
魔女は頁を一つ、また捲る。
其処には、やはり無音だけ。
「いいえ、未だなのよ。パチェ。此の芝居は既に終わり続ける。そして、此の芝居は既に始まり続ける。何も終わらない、だから、何も始まらない。此の間違いだらけの恋文は、其れでも永遠に続き続ける。其れが、貴女と私の約束なのだから」
閉館、と書かれた紅魔館の中に魔理沙とアリスが侵入するとそこには陰鬱な世界があり……。
装飾過多な文章かつ陰鬱な二次創作小説というイメージが強いこの作者さん(あまり読めてないのでひょっとしたらこんな雰囲気じゃない作品もあるのかもしれない)の作品。
新約聖書や幾原アニメなど各所から元ネタがちりばめられているのでそこらへんを考察するのも楽しいけども、ここらへんの考察は敢えてすっ飛ばして(だって自分はほとんどアニメ見ないし…)、中身と文章についての感想を。
メタ的な構成で幻想郷を語りつつ、色んなキャラを作者の思うがままに死なせていく。これは小説だからこそ映えるような設定だと思うし、きっと次の章でも誰かが悲惨な目に遭うのだなぁつらいなぁ、と思っても読み進めてしまうような魅力があるんだよね。特にむしろこの酷い部分とメタ的な部分の文章が段々と楽しみになってきて、本編や元ネタ考察を置いてきぼりにしてしまう。冒頭に引用した文章みたいに思わせぶりな文章を反復させる事で幻想郷について、ここに存在する人たちについて想像してしまうような文章が結構入っていると思う。特にレギオンがする会話はまたそれが顕著。
だって、咲夜さんの死を描いてからめーさくを描くところなど良いと思ったけども、最後の章の三魔女対霊夢みたいなところとかさすがに三魔女があれはないでしょう……みたいなイメージじゃない? 元ネタあるのかもしれないけどね。
緋劇→禍劇に到るまでのメタ的な構成は平行世界ものが好きな人にとってはきっと面白いはずだよ。どっちにしろ魔理沙は救われない。。。
ちなみに冒頭に書かれているηλι, ηλι, λαμα σαβαχθανιという文章はエリ・エリ・レマ・サバクタニのギリシャ語表記だよ。作品全体を確かに現している言葉の気もする。