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全く言語が通じない異世界へ飛ばされた『エぺぺ』を久しぶりに読んでみたよ

 

この時雨沢恵一先生のツイート、かなーり前のやつだけどこれって『エぺぺ』の事だよねぇ。と思いつつ今に至るまで復刊とかそういう気配もないのですっかり忘れてましたが、ふと思い立って再読。

 

エペペ

エペペ

 

ブダイの言語に対する感覚はじゅうぶんに開発されたものであったし、言ってみればそれは彼の専門分野であった。彼の専攻分野は語源学と言語分析、すなわり<語の起源>の探求だった。彼はこの仕事を通じて、さまざまな言語の多様性を取り扱わなければならなかった。フィンーウグリック語族の研究においては、フィンランド語やハンガリー語だけではなく、ヴグル語、オスティア語、トルコ語、それにアラビア語ペルシャ語もいくらか学ばなければならなかった。さらに彼は教会スラヴ語、ロシア語、チェコ語、スロヴァキア語、ポーランドセルビア語、クロアチア語にまで興味にかられて手を出したことがあった。しかし、当地で耳にした言語はどれもひとつとしてこれらのものに該当する要素はなかったし、さらにはサンスクリット、ヒンズー語あるいは近代ギリシア語を思い起こさせるものすらなかった。彼はドイツ語、英語、いくらかのオランド語を知っていたから、それはゲルマン語系ではありえなかった、さらに彼はラテン語、フランス語、イタリア語、スペイン語ポルトガル語ルーマニア語、レトロローマン語を話せたし、またヘブライ語アルメニア語、中国語、日本語について、いくらかの知識もあったのだった、言うまでもなくさまざまな語の起源とその歴史について学者然とした分析をする場合に、そういったことばはいつも必要にせまられて読まされたにすぎなかったけれど、しかし彼はここで話されている言語はそれらのどれとも似ていたいということを結論ずけるくらいには、それらの言語に通じていた。彼は耳で聴いても、その言語がどの部族に通じているのか、決定できなかった。

とまぁこんな感じで既知の言語とは全く違った言語の世界になぜか飛ばされた主人公がこの世界を抜け出そうとする小説、文字も会話もわからない世界。なんだけども今読むとなぜか「アラビア数字の文字」 だけは理解できるように書かれてたりして徹底度が足りないような気もする。

まぁ物語を進めるために数字はしょうがないのかもしれない。仮に数字の文字もわからない世界にしても建物の階数やら何やらで数字を読み解くための章が増えるだけだろうし……。

とまぁそういう事は置いておいてこの既知の言語とも全く判別つかないことばって表現が非常によいよね。こういう表現は漫画じゃやりにくいし、小説だからこそできる表現。読書会とか開いてこの世界の言語のイメージをみんなどう持ったか聞いてみたくなる。

自分はヒエログリフを消しゴムでぐっちゃぐちゃにしたような文字のイメージで会話はピングーが喋ってるあのイメージだった。

 

さて、内容は延々と堂々巡りする類の話で、全くわからない言語をわずかな手がかりからわかるようになるような本ではなく、何が起ころうとも「次の日にはすべてなかったことにされている世界」っぽいのが描かれてる。言語が意味不明なだけでこの世界の人間の価値観はそこまで主人公と乖離しているわけではない(ように見える)。だからこそちょっと意味がわからない行為を見るとその分からなさが不気味に見えてくる。ディストピアっぽくていいよね。

 

そして最後のこれ、時雨沢先生の「野垂れ死ぬ」という展開ではないですが、「これって………」と思うような収拾の付け方とも思う。

しかしこれ以外の収拾の付け方ってあるのかなぁ。と考えてもなかなか思い浮かばないんだよね。読んだ人はこれ以外の終わらせ方を思いつきましたか?

 

 

古典というか古い小説の異世界転生ものという括りで見るなら結構尖ったのがあるような気もするしそういうのをまとめて紹介したら需要があるかもしれない?