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『ずっとお城で暮らしてる』はヤンデレ百合小説じゃないのかな。という説。

 

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

 

 

 

みんな死んじゃえばいいのに。そしてあたしが死体の上を歩いているならすてきなのに

 

コンスタンスはふり返り、軽く眉をひそめてちょっとの間こちらを見ていた。「お願いしてはだめよ」ようやくそう言った。「わたしたちはだれにもお願いしないの。覚えておきなさい」

「冗談よ」あたしが言うと、コンスタンスは笑顔にもどった。「だってあたしがほんとうにほしいのは翼のあるウマだけなんだもの。姉さんを月までつれていって、もどってこれるわ、あたしとウマとで」 

 

あたしはチャールズのことを考えていた。あいつをハエに変えて、クモの巣の上に落としてやる。死にかけてブンブンいっているハエの身体に閉じ込められ、巣にからまって手も足も出ず、じたばたしている姿を見物してやるんだ。あいつが死にますようにと願い続けていたら、いつかは死んでしまうだろう。

 

 

昔は少女たちの、閉鎖的な村社会の怖さを描いただけの作品だと思ったけども、今思い返すと”これってヤンデレ百合小説の傑作だったのでは”と思ったのでシャーリイ・ジャクスンの『ずっとお城で暮らしてる』を読み返してみました。あらすじを適当に書くと

 

”資産家の家族を毒殺したの嫌疑をかけられ無罪となった姉コニー(コンスタンス)とそれを世話している妹メリキャット、裁判では無罪となったものの村人からの疑いは晴れる事なく彼女たちは村の子供達からも囃し立てられるくらい疎外され憎まれている。

そんな中でメリキャットは常日頃から村人がみんな死ねばいいのに、と思いつつ大きなお屋敷でコニーと死にかけの叔父さんジュリアンと3名(あと猫のジョナス)でひっそりと暮らしている。そんな中で従兄弟のチャールズが現れて…”

 

とまぁ姉妹2人が外の世界を拒否しつつ2人だけの世界を守っていくような小説。親族がやってこようとも、気の優しい村人が救いの手を差し伸べようとも”姉妹2人しかこの世界にはいらない”とでも言うようにそれをひたすら拒否し続ける。少なくともメリキャットの方は。まぁ、ここらへんまでなら閉鎖的な空想の世界に閉じこもった偏屈な姉妹の百合小説、で終わるのかもしれない。

 

なんでヤンデレ百合小説と思うかというとコンスタンスとの世界を維持していたいメリキャットがとにかく病んでるように見える。冒頭でも引用したけど子供の精神状態のま姉妹たちの世界に入ろうとする相手を憎み、邪魔しようとする。そこには通常の善悪の判断は存在しないし、空想と現実の区別もあまりついてなそうに思える。

そしてメリキャットは……と語り始めるとネタバレになるからここらへんで(他に感想を書いているブログも結構見たけどもやっぱり肝心な部分まで紹介はしてないし、みんな思うところは一緒なんだなぁ。と)。

改めて読んでみると最後のメリキャットの台詞なんかシンプルだからこその怖さを感じる作品だったよ。どんなありきたりな言葉だろうとそれまでの肉付けでなんとでも印象が変わるいい見本だと思う。