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東方同人誌感想とか書いてみよう 1004冊目

La Mort Rougeさんの『アリスのための物語』

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アリスが紅魔館に行き、永遠亭に行き、パチュリーやメディスンと出逢う。その過程で明かされるアリスの秘密やアリスを巡る人々の関係は……。

 

この本はもともと分厚い本だしpdfでもかなりの分量(500MB以上ある)ので、結構体力を使う本です。

 

小説同人誌の類は一度買うのを逃すと漫画以上に中々入手しずらいので、どのような形でDL版を頒布しているサークルさんなんかはとてもありがたいのですが、それはそれで”どうせあとでDL版出るから現物買わなくていいや…”ってなりそうなので難しいところ。DL版だとそのまま即Dropboxに入れて外でiPhoneで読むってのが出来るから重宝してるのだけども。。。これはDL版を読んだやつなのでそんな事をつい思ってしまう。

アリスのための物語【La Mort Rouge】をダウンロード - メロンブックス DL

 

浮世の巫女は終わったら一気に買おうと思ってたけどもさすがにすぐに全部は読めなそうだしどうしようかな。。

 

カズオ・イシグロの小説タイトルから章を作っているので、ネタが分かる人には”そもそもこの語り手はあまり信用出来ないんだな…”と思うし(作者による解説ページにここらへんの小ネタは解説されてるものの、読んだ後にここは読んだ方がいいよ。ネタを知ってから読むのは面白くない)、他にも小ネタが詰まっている。まぁここらへんは本当に小ネタなので知らなくても別に問題はなかったり。

 

まぁこれはマリアリ小説でもあるし、メディアリ小説でもあったり。マリアリの部分は最初から最後まで読みきってこそ”これはいいマリアリ。。。”という感想になるし(魔理沙の行動を誤解して堕ちてしまったようなアリスがきちんといいマリアリとして収束していくところは多少くどいけども読み応えがある。特に薬の副作用でめんどくさい状態になったアリスが魔理沙を困らせるようなところは好き。)、メディアリの部分はマリアリとはまた違ったアリスの側面が見られる。自分が作った人形に向ける感情とは違う感情をメディスンにここまで向ける理由……を作中から想像するとね。。

 

そして何よりもアリスそのものについて書かれた小説で、”何体ものアリス”が入れ替わり立ち代わりして一人のアリスとして動いている。という推察が出来るような描写が随所に存在する。こんなアリスだからこそ不安定にもなるし、途中で救いが無くなってしまう(ように見える)感じにもなる。。

でも、”このアリスが幸せになっているだけで次のアリスは……?”みたいな事も思ってしまう展開からのあの最後の文章はすごく希望が見える。1章最後の文章と読み比べるとかなり違うテンションになってるしね。アリスの解釈は人によって全然違うのでこれだけでも面白いよ。

 

最後の一言はちょっと、というかかなりネタバレなので反転。ラストに関わっているので読んでから読みましょう。

 

この小説は”1章を綴っているアリスから最終章を綴っているアリスまで全て同じアリスによる追想”という解釈をするとすごいすっきりすると思う(自分だけ?)。

この解釈の根拠は1章~3章までの最後の文章が過去形になっていて、次の章で起きる事を既に知っているような描写になっている事。そしてこのアリスは最終章のアリスよりもちょっと先のアリスで自分がどういう存在かも理解しているようなアリス。。ってのは駄目かな…。

わたしの物語はいまや、次のページに何が書いてあるかすら分からない。
否、それはわたし自身で綴らなければならないのだ。
そのことが怖ろしくないと言えば嘘になる。
それでも、どんなに拙くても、わたしは紡いでいこうと思う。

 

最後の文章のここらへんは自分の事を理解しつつ、かつ希望を持っていないと綴れない文章だと思う。。

 

”エラーを起こす描写、アリスが違うアリスに変わる描写みたいなところ”をアリスが書いているのか?作者が書いているのか?という2種類の解釈からどっちを選ぶかでまた違ってくる気もするけどね。この語り手がどこまで信用できるかよく分からないところはカズオ・イシグロオマージュっぽくていいと思います。