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漫画感想

たまには漫画の感想も適当に。というか読んだあとに何かはっきりと言葉で形にしないと落ち着かないような本だよね。阿部共実って。

一応内容に触れているのでネタバレ注意。

 

阿部共実『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々 2』

 

 

 

「なくした僕の心はどこにあるのか」

ディスコミュニケーションな男女が最後は綺麗に結ばれる?綺麗な阿部共実の方の作品。最初に入れる作品は割と綺麗なのにする、って縛りでもしてるのかな…ってくらい毒がないよね。

 

「僕の夢の中のあの子は僕の夢の中のあの子の夢の中ですらどうせ僕を夢見ない夢を僕は見る」

実験的漫画、「ガガスバンダス」に近いものを感じる。

まとめると

 

・ハンバーガー店にて幽霊の話をしつつ、てカレーとパフェを一緒に食べる桜さんと湊さんの会話

・の話をしてから話を逸らす桜さんと湊さんの会話

・の話をしてからハンバーガー店での男子高生の話をする桜さんと湊さんの会話

・の話をしてから自分たちみたいに幽霊の話をしている女子高生、の話をしていた女子高生の話をする桜さんと湊さんの会話

・の話をしてからカフェでカレーとパフェを一緒に食べて話を逸らそうとする女子高生についての話をする桜さんと湊さんの会話

・の話をしてから自分達すら思い出話の中の人間じゃないのかな、って語りはじめる上に宝くじで1億円当たった話をする桜さんと湊さんの会話

・の話をしてから色々と突っ込みを入れられる桜さんと湊さんの会話。

 

みたいに一直線のわけのわからない女子高生トークになって、文章で書くと非常に面白くないのども漫画で描かれると阿部共実作品らしくてすごい面白いんだよね。ぐるぐる回って結論にいつまでたっても行き着かないこの感覚。

 

「友達なんかじゃない」

あまり自分たちを知らない人からの善意こそ有害、というテーマ(だよね?)は「4年2組熱血きらら先生」でも描かれたしこういうのを描くのはすごい上手いよね…。こちらはきらら先生で描かれた生徒と先生のディスコミュニケーションではなく、女子高生同士の”他人には分かってもらえないような友情”もので、百合漫画にも見える。百合っていうほどでもないのかな。

 

「ススーーパパーー加加藤藤ささんん」

かなりおかしい男子高生とちょっと年上お姉さんな福別府さんと加藤さんの漫画。目次見て「スーパー加藤さん」というタイトルじゃない事に気づく。

ちょっと匙を間違えると男子高生がおかしいだけの作品なのに笑えるのにしてるのはすごいよね。加藤さんは実在の人物じゃないと思うけどもみんなどう思ったのかな。

 

「アルティメット佐々木272」

27歳女やもめ佐々木さんが20歳坂本君に路上で繰り広げるセクハラまがいの会話。

いつも思うけども20代も10代もみんな顔が一緒の絵を描く人だよね、あと体型も………この人がふくよかな老人を描いたら一体どうなるんだろうとか思ってしまう(描いた事あったっけ?)。

まぁそれは置いといて男が想像する理想的な20代終盤もてない女子、から少しずれてるような女の子を描いたような作品。佐々木さんみたいな子はありかなぁ…やっぱりないかもしれない。

 

「おなじクラスの鈴木くんのねこの人形」

「歩み」と似たようないじめネタ、反省とも後悔ともつかない顔をしているのに謝らないところに後味の悪さがあるよね。

 

「8304」

松田とけんちゃんが再開して…

男子高生同士の些細な会話をここまで綺麗な絵、綺麗な言葉で描くのは新境地なのでは…けんちゃんが泣き出してから松田とする会話の良さ。からの最後の一文。

普通の作者ならこの一文を入れない方を選ぶ気がするのに平気で今までを台無しにする文章をさらりと入れるからこそ阿部共実の漫画は良いんだよね。

 

最後の文章は”松田に借りた本を返してない”って事だからけんちゃん視点なはず。

松田がけんちゃんに貸した”本”は一体何なのか、って解釈を探すと『銀河鉄道の夜』だって解釈があってなるほどなぁって思う。

 

けんちゃんの台詞は

「読んでると世界がすきとおった宝石だけでつくられたように感じてくるんだ」(74ページ)

「親からあんな素晴らしい本を与えられて」(82ページ)

「その日ふたりはどこまでもどこまでもかけていった この本を読むたびにこれだ」(96ページ)

松田の台詞は

「昔お父さんからもらったものだけど貸してあげるよ」(74ページ)

「僕は豊かじゃないんだこの目に映るものが宝石のようにだなんて見えないよお

古い本や古い音楽も旅行も勉強もつまらなくて退屈なだけなのに

けんちゃんがお父さんの子だったらよかったのに

上品だし頭も僕よりいいし

何度も読まされた本が大嫌いなんだあ」(91ページ)

 

大人になってから(たぶん)何度も読み返すような本、ってのは『銀河鉄道の夜』だと思うしけんちゃんの言葉は宮沢賢治らしいと言われればそれっぽい。特に最後はここのオマージュと思えばすごいしっくり来る

 

宮沢賢治 銀河鉄道の夜

「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなのさいわいのためならば僕のからだなんか百ぺんいてもかまわない。」
「うん。僕だってそうだ。」カムパネルラの眼にはきれいななみだがうかんでいました。
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」ジョバンニが云いました。
「僕わからない。」カムパネルラがぼんやり云いました。
「僕たちしっかりやろうねえ。」ジョバンニが胸いっぱい新らしい力がくようにふうと息をしながら云いました。
「あ、あすこ石炭ぶくろだよ。そらのあなだよ。」カムパネルラが少しそっちをけるようにしながら天の川のひととこを指さしました。ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。天の川の一とこに大きなまっくらな孔がどほんとあいているのです。その底がどれほど深いかそのおくに何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも見えずただ眼がしんしんと痛むのでした。ジョバンニが云いました。
「僕もうあんな大きなやみの中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」

 

 

「日々」

クラスのこわい女子とおとなしい女子が仲良くなる話。単行本の最後の方でこういういい話があると大抵次は気分を落としてくる話だと思ったら……。

 

「7759」

これ以上ないってくらい2人にとっては幸せな話、だと思えるのにすごい落ち込ませてくれるような作品。一言では言葉にできないような感想が出てくるこういう作品を読めるからこそ阿部共実の漫画だけは最近漫画をあんまり読んでない自分が買い続けてるのかもしれない。

最後の最後に到らないと”千夏”と言えない立花くんのヘタレさ…。

先に先輩の方だけ死んでしまったのは別に”立花くんと一緒に死にたくなかった”わけじゃなく、立花くんに生きて欲しかったから、立花くんが最後みたいな行動をするとは思ってなかったから…の気もする。そうじゃないと誕生日ケーキなんて作らないでしょうに。

あと白い線が広がっていくあの描写、先輩と立花くんで微妙に違ってるよね。先輩は最後に白い線がバーっと広がってから終わるのに、立花くんの方はそこのところが先輩と一緒にいる風になってる。立花くんの方がやっぱり幸せに死ねたんじゃないのかな……。

 

 

カバー裏漫画

1巻の「ネコネコココネコネコネネコ」の続き、「7759」を読んだ後にここを読むとすごく和めるはずなので最後に読もう。