読書感想
なんかアクセス解析見たらめちゃくちゃアクセスされている。。と思ってリンク見てみたら制作のしおり(ラスティカレスケット)さんにリンクが貼られている。こんなサイトまであのサイトの管理人の人はチェックしているのね…ここ便利ですよね。
という流れを無視して普通の本の感想。自由にものを書けるのがブログのいいところ。どうせ誰もまともに読んでやいないのだから(自暴自棄)
パク・ミンギュの『カステラ』
『ストーナー』とともに第一回の日本翻訳大賞の受賞作品。翻訳ものの本を対象にした賞がほとんどなかった事もあって読者参加型の形式で作られた賞。だっけ。なんかTwitterでやってるなぁってのはちらほら見てたけども投票とか別に参加してなかったんだよね。でもこれを読んだら予想外に面白くてなんか投票しとけば良かったなぁ…と思ってしまった。第二回もやるなら投票するよ。
この『カステラ』は韓国人作家による短篇集。なにげない日常を描いているところにそれまでの話題とは全く関係のないものが現れてくる。この日常と非日常が交じり合っているのなら”マジック・リアリズム”と簡単に言えるのかもしれないものの、この短篇集は全く入り混じっていない感じを受ける。この”急に何か出てくる違和感”を楽しむような作品。いや韓国の文化と照らし合わせると何かちゃんとしたモチーフというのがあるのかもしれないけど。
「カステラ」
壊れた冷蔵庫と友達になった男の話。一番最初の”この冷蔵庫は前世で、フーリガンだったのだろう”という文章からしてぶっ飛んでいる。そしてどんどんとぶっ飛んだ男と冷蔵庫の世界へ突き進んでいく…。あんまり内容について言っても面白みが減るし言わない。
「ありがとう、さすがタヌキだね」
上司のPCのモニターにタヌキを出した主人公、そのタヌキが現実世界に侵食していって…
これは最初はまともな話に見えるものの段々と論理が飛躍していき訳がわからなくなっていく。結局タヌキって何なのだろう。
「そうですか?キリンです」
”満員電車の押し込み役のバイト”をする主人公の話。今は満員電車の押し込み役なんて滅多に見ないもののここで描かれている満員電車の様子は日本に通じるものがある気がする。キリンと満員電車に何の関係があるのかって思うもののやっぱり何の関係もないよね…
「どうしよう、マンボウじゃん」
地球を一度離れてみよう、とする話。ここまで読んでいると段々と論理の飛躍していく短編に慣れていって素直に楽しめるようになったりする。
「あーんしてみて、ペリカンさん」
寂れた遊園地の話と、世界中をスワンボートで飛び回る人達の話。前後の脈略がやっぱりないようなあるような…で面白い。
「ヤクルトおばさん」
ドードーを絶滅に追い込んだ人間たち、その過程でドードーの言葉をまとめる”ドードー翻訳士”という職業が出てきて…病院にいる現代経済学に何万個もの「スタンディング・オベーション」が届けられ「スタンディング・オベーション」がボランティア活動を初め…
こんな話から一体なんで「ヤクルトおばさん」ってタイトルになるのか…って思うものやっぱり無理矢理つなげている。ただ便秘のくだりはあんまりおもしろくなかった
「コリアン・スタンダース」
農村に迫り来るUFOの話。このUFOによる農村侵略は政府による強制徴収かなんかを表しているのではとは思ったものの韓国のことはよく分からなかったしそんな読み方をすべきじゃないのかもしれない。
「ダイオウイカの逆襲」
”150メートルのダイオウイカ”という誤植に心躍らされた少年の話。この作品集の中では一番現実に即している話じゃないのかな。
「ヘッドロック」
ハルク・ホーガンにいきなりヘッドロックかまされた主人公がリベンジのために身体を鍛え、街の人達に通り魔的にヘッドロックをかましていく話。ものすごくくだらなくてそれがいい。
「甲乙考試院 滞在記」
まず思うのが”考試院”ってなに?って事だよね。一応1ページ目で”国家試験受験者用の施設だけども家賃が安いからほとんど一般入居者になっている”みたいな事が書いてあるものの日本でいうと何になるのだろう?普通に安アパートの住人たちの話として読んでしまったもののもっと他にはない特徴が考試院ってものにはあるのかな…
「朝の門」
これだけ毛色が違う、と思ったら訳者が違うのね…自殺志願者を題材にした話ですごく最近の日本の小説っぽく見える。そこが逆にこれまで読んできた短編とは合わなくて…ってなってしまった。
翻訳者が最後に”韓国では日本の小説コーナーがあるのに日本では大型書店にすら韓国の小説コーナーはない”って嘆いていたのでこの本を機に面白い韓国の小説がたくさん訳されないかな。
『ストーナー』もそのうち読むよ。たぶん。