東方同人誌感想とか書いてみよう 142冊目
鵺箱さんの『REPORT 量子力学及び相対性理論から見る5つの幻想』
不確定性理論からすれば
この世界は曖昧…
そこにあるクローバーは観測するまで
三つ葉であり四つ葉である
そこから何からしらの要員により
世界は確定している
そう
誰かが齧ったり見たりするま
どちらでも存在する
つまり、四つ葉だらけなのは
幸運とかそんな段階の問題じゃない
あなたが意図的に選択肢を減らしている
四つ葉しか生えていない
世界以外を無かったことにしている事になる
5部(6部?)構成で秘封倶楽部の能力(特にメリーの境界を観る能力)について 考察している漫画。原作で語られていないような部分をこう好き放題に解釈した本すごく好きでここから色々と語れると思う。あまりSF的な解釈される事が少ない東方をSF的に解釈した稀有な本。
けどこの本の感想探しても見つからなかった…ここで初めて書くのかな?とりあえず1部ずつ紹介
1・多重世界と多世界超越
メリーの境界が視える能力についての考察の章。蓮子と紫の邂逅の章でもあったり。蓮子はメリーの能力を”多重世界論”を前提として”存在する平行世界を見る事が出来る能力”という解釈をしている。そして紫もエヴェレットの多世界解釈を持ち出しそれに賛同しているようなしていないような。
2・世界選択型消去法による運命操作論と白詰草
てゐの人間を幸福にする能力についての考察の章。幻想郷へ迷い込んだメリーの章でもあったり。
前章の多世界解釈を持ち出してゐの能力を説明しようとする永琳や紫。引用した文章のように”幸運のない世界を一つ一つ潰した結果がてゐの能力”という説明をしようとする。勿論てゐはそんな難しい事じゃないと否定する。
3・永遠とライフゲーム
輝夜の”永遠の生命”についての考察の章。
蓮子は紫の言う”永遠の生命”をすぐに否定するものの紫は”事象の地平線に生命閉じ込める事によりそれが可能”というような説明をする。輝夜の説明はもっと単純で”蓬莱の薬で魂を固定しているから”という原作準拠の説明をする。
ここで蓮子はメリーの能力についての仮設も提示する
”私達の世界が多世界解釈の世界だとしてもそう簡単に他の世界へ干渉できるわけがない。たとえ視るだけだとしても。メリーの能力は無意識に境目をこじ開けているのではないか”
4・連続性プランク時間による多重世界観測を多重世界超越観測
輝夜と須臾を操る能力についての考察の章
輝夜は”須臾を操る”事によって時間をほぼ止める事が可能、その時間の中でまだ確定していない未来をいくつも見る事が可能。しかし輝夜曰く”須臾を操る事でしか多世界を認識できない自分よりも普段から多世界観測が出来るメリーのが力が上”
5・世界間特殊移動孔の亜光速移動による時間超越と落し物
メリーが如何にして現代→過去へ飛ばされたのかの説明の章。紫のスキマの能力の説明の章でもあったり。
紫はスキマの事を蓮子にワームホールと説明する。そしてその中では亜光速の速さで物体が移動し相対性理論により物体は過去へと転位する。
6・QED(というわけだったとさ)
メリーが如何にして過去→現代へ戻ってきたのかの説明の章。
スキマは現代→過去の一方通行で未来へと送り返す事が出来ない。そこでメリーはコールドスリープというものが未来にあると提案してみると、紫は”月へ攻め入って拝借してくる”と言い…ここでようやく原作とはっきり繋がるような
最後の最後でメリー=紫説を採用している作品でもあったり。
4、5、6の説明からするとこの作品中に描かれているメリーの過去への転位は1回目(700年前への転位)であり、2回目の転位も存在する(1400年前への転位)と紫が言及している。この2回目でメリーは人と妖の境目を完全に超えて…
ただし6で紫は”もう一方の私にも悪い”と説明しているのでこの紫が直接メリーと繋がっているわけではないともとれる(このメリーが紫になったのならコールドスリープの事を覚えていないわけがないのでは)。何度も説明された多世界解釈の中での一つの世界に迷い込んだメリーの話…のような気がする。
ちょっと無理があるかなぁという解釈もあるものの強引に最後まで描ききったところは凄いと思うしもっと評価されてもいい本だと思う。
5/24 追記
作者さんのpixivで公開されてるね。深秘禄以前の本で深秘禄の事は考えちゃいけないよ。
【秘封倶楽部】「【同人誌再録】REPORT【秘封】」イラスト/のん@例大祭E51a [pixiv]